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垂直なるもの、垂直なること。 [日記、時候]

味岡伸太郎展 垂直考 (11/8~11/30)  ギャラリーサンセリテ

今、ギャラリーサンセリテで開催中の展覧会。
「 垂直考 」と意味深なサブタイトルが付けられています。
垂直考1.jpg

ご覧のように、木の枝、鉄の棒、石などが「立って」います。
そっとでも触れてしまえば、たちまち音を立てて倒れてしまうまま、そこに「立って」います。
垂直考4.jpg

それらは様々な手段を駆使して、垂直を求め続けている。

垂直考3.jpg

ある時は挟まれ。

垂直考2.jpg

またある時は支えられ。

垂直考5.jpg

これ以上「立たせる」方法があるだろうかと思いながら追って見てゆくのが楽しい。

さて、「垂直」というものは概念であって、重力によって生み出される相対的なある状態でしかない。
ですから、「垂直」そのものは目には見えないものである。大地と重力の関係において、遇(たまたま)垂直な状態にある枝や石を今わたしは見ているだけである。

古くインドに龍樹菩薩(りゅうじゅぼさつ)という天才がいた。彼の著書・大智度論に「 指月の譬」というものがある。

人の指を以って月を指し、以って惑者に示すに、惑者は指を視て、月を視ず。人、これに語りて、『 われは指を以って月を指し、汝をしてこれを知らしめんとするに、汝は何んが指を看て、月を視ざる』、と言うが如く

「月を知らせようと、指で指し示すのだが、愚かな者はその指ばかりを見入って、月を見ないままである」という、言葉とそれが知らせようとするものが異なることを告げている譬えであります。

今ここでそれに倣って考えれば、これらの作品が表わしているものは、その作品自体の存在ではない。
目に見えない「垂直」という方向と力を表示していることになる。

つまり、このギャラリーへ入ったならば、一目場内を見渡せばそれでよし。近づいて作品の細部を観察する必要はなかった。(もちろん味岡氏はぬかりなく細部へのこだわりと技巧をおろそかにはしていないが)

どの作品も「垂直」を体現していることに気付くには、距離を置いて眺めたほうがいいと私は思う。

ここに並ぶモノたちは、「垂直」を成り立たせる力学に従って整列しているのである。

その下方は地球という球体の中心を示し、上方ははるか天空のその先を指している。

その示す天空を見上げると、ギャラリーの黒い天井を突き抜けて宇宙へと続く。

そしてその力は同じくこの私の身体をも貫いていることに気付いた。

「垂直」に立つ、私。

ギャラリーサンセリテの情報はこちら
http://www.sincerite.info/

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コメント 2

野尻眞理子

こんにちは、いつも有難うございます。味岡さんは「お寺さんらしいコメントだな」と嬉しそうに呼んでました。私は「私の身体・・・」には驚き、合点!でした。
ところで、拓本について、オリーブオイルとは知りませんでした。選ぶ理由は何かしら?興味あります。
by 野尻眞理子 (2014-11-16 12:04) 

悟道

難関・味岡氏をパスできたようなので、とりあえず安堵しています。

現代美術をもっとたくさんの人に楽しんでもらえたらと思っておりますが、それには水先案内人のような役割が必要なのでは。ただし「見方を教えます」的なものではなく、「私はこんな風に感じました」という声がいっぱいあるほうがよさそうに考えます。

私のコメントがそのひとつになれば、よろしいかと。
by 悟道 (2014-11-16 21:16) 

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