おもかげ復元師 [新聞、書籍より]
本堂に書棚を設置した記事を読んでくださったお檀家さんが、きっと私の趣旨に副うだろうと二冊の本を届けてくださった。
左『おもかげ復元師』・右『おもかげ復元師の震災絵日記』 共に笹原留似子著
笹原留似子さんは納棺師です。ご遺体に死化粧を施し、お棺に納める仕事をなさっていらっしゃいます。
ただ、彼女はどんなに損傷の激しいご遺体、時間経過と共に変容してしまったご遺体も「復元」させることができるという、日本にも数少ない方のひとりだそうです。
そんな笹原さんは地元岩手県で震災に遭われます。数日もせぬうちに彼女は知り合いの僧侶に誘われて津波に襲われた海岸部へと足を運びます。そこで壮絶な惨状を目の当たりにし、そして遺体安置所に行き、なんの手も施されないままのご遺体が並ぶ光景を見て、「わたしにしかできないことがある」と思い、それから寝る間も惜しんでひとりひとりのご遺体を丁寧に復元するボランティア活動を開始します。
笹原さんの思いは、ご家族に思い出の中の故人に戻して(復元)あげることで、ご家族ははじめて故人の死を受け入れ、別れをすることができる。それは故人の願いでもあるのだからというものです。
ギリギリの状況の中で笹原さんはたくさんの故人とご家族を向き合わせていかれました。
この日も、親を失ったたくさんの子どもたちに出会いました。あまりに悲しいお別れです。わたしは何度も胸を詰まらせました。
お父さんを亡くした、四歳ほどの娘さん。
とても会わせられる姿でないと、二日も対面を先延ばしにされていたといいます。陥没していた目の下の部分をどう戻すのか、そこが復元のポイントになると思いました。津波で何かにぶつかったのでしょう。大きな傷でした。
まだ若いお父さんです。頬からあごにかけてのラインに、若さが残っています。娘さんをだっこしたとき、きっとこの小さな手がこのラインに触れていたのだろうな、と思いました。だから、しっかり戻してあげよう。娘さんが、また触れることができるように。
さぞやかわいがっていたことでしょう。最もかわいい頃なのです。そして、娘の成長を楽しみにしていたでしょう。わたしはそんなことを思い浮かべながら、やさしいパパの顔になるよう、懸命に復元し、おもかげをひとつひとつ戻しました。
お父さんに微笑みが戻ってようやく、対面してもらえました。おじいちゃんやおばあちゃんも、一緒に対面してくれています。じっと動かないお父さんのやさしい顔を見て、目に涙をいっぱいためた彼女から出てきたのは、まさに懸命の一言でした。
「パパ、さようなら・・・・・・」
おばあちゃんが手で顔を覆いました。おじいちゃんは目に涙をいっぱいためて肩を震わせています。ママが泣きながらとなりでいいました。
「さよならは、さみしすぎるよね。またね、にしようか」
女の子は、じっとお父さんの顔を見て、いいました。
「パパ、またね・・・・・・」
かわいいその声に、みんなが泣きました。わたしも涙をこらえることができませんでした。わたしはいいました。
「ぜひパパに触れさせてあげてください。たくさんパパに触れて、彼女が思った通りの時間をすごさせてあげてください」
この本はページを追うごとに泣けて泣けてしかたがありません。
読むときはハンカチの用意と、周りに人がいないことを確かめてから。
左『おもかげ復元師』・右『おもかげ復元師の震災絵日記』 共に笹原留似子著
笹原留似子さんは納棺師です。ご遺体に死化粧を施し、お棺に納める仕事をなさっていらっしゃいます。
ただ、彼女はどんなに損傷の激しいご遺体、時間経過と共に変容してしまったご遺体も「復元」させることができるという、日本にも数少ない方のひとりだそうです。
そんな笹原さんは地元岩手県で震災に遭われます。数日もせぬうちに彼女は知り合いの僧侶に誘われて津波に襲われた海岸部へと足を運びます。そこで壮絶な惨状を目の当たりにし、そして遺体安置所に行き、なんの手も施されないままのご遺体が並ぶ光景を見て、「わたしにしかできないことがある」と思い、それから寝る間も惜しんでひとりひとりのご遺体を丁寧に復元するボランティア活動を開始します。
笹原さんの思いは、ご家族に思い出の中の故人に戻して(復元)あげることで、ご家族ははじめて故人の死を受け入れ、別れをすることができる。それは故人の願いでもあるのだからというものです。
ギリギリの状況の中で笹原さんはたくさんの故人とご家族を向き合わせていかれました。
この日も、親を失ったたくさんの子どもたちに出会いました。あまりに悲しいお別れです。わたしは何度も胸を詰まらせました。
お父さんを亡くした、四歳ほどの娘さん。
とても会わせられる姿でないと、二日も対面を先延ばしにされていたといいます。陥没していた目の下の部分をどう戻すのか、そこが復元のポイントになると思いました。津波で何かにぶつかったのでしょう。大きな傷でした。
まだ若いお父さんです。頬からあごにかけてのラインに、若さが残っています。娘さんをだっこしたとき、きっとこの小さな手がこのラインに触れていたのだろうな、と思いました。だから、しっかり戻してあげよう。娘さんが、また触れることができるように。
さぞやかわいがっていたことでしょう。最もかわいい頃なのです。そして、娘の成長を楽しみにしていたでしょう。わたしはそんなことを思い浮かべながら、やさしいパパの顔になるよう、懸命に復元し、おもかげをひとつひとつ戻しました。
お父さんに微笑みが戻ってようやく、対面してもらえました。おじいちゃんやおばあちゃんも、一緒に対面してくれています。じっと動かないお父さんのやさしい顔を見て、目に涙をいっぱいためた彼女から出てきたのは、まさに懸命の一言でした。
「パパ、さようなら・・・・・・」
おばあちゃんが手で顔を覆いました。おじいちゃんは目に涙をいっぱいためて肩を震わせています。ママが泣きながらとなりでいいました。
「さよならは、さみしすぎるよね。またね、にしようか」
女の子は、じっとお父さんの顔を見て、いいました。
「パパ、またね・・・・・・」
かわいいその声に、みんなが泣きました。わたしも涙をこらえることができませんでした。わたしはいいました。
「ぜひパパに触れさせてあげてください。たくさんパパに触れて、彼女が思った通りの時間をすごさせてあげてください」
この本はページを追うごとに泣けて泣けてしかたがありません。
読むときはハンカチの用意と、周りに人がいないことを確かめてから。
2014-03-01 07:00
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コメント(2)
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檀家のえむこです。
紹介してくださってありがとうございます。
私も涙なくして読むことができなかったこの本、本堂の書棚のお仲間に入れていただければとてもうれしいです。そして、お参りに訪れる皆様にも手にとっていただければ尚のことうれしいと思っています。
by えむこ (2014-03-02 09:10)
こちらこそ、すばらしい本をご紹介くださりありがとうございました。
by 悟道 (2014-03-02 10:01)